遺言に書く内容として書いてはいけないことがあるのでしょうか?基本的には、遺言に関する法律の規定には書く内容について規定がないため、何を書いても構いません。しかし、その書いた内容が遺言として効力があるかについては別の問題です。では、何を書くと遺言として効力があるかについては以下の12項目が挙げられます。ただし、その遺言内容が法令に違反する内容だと無効となる可能性もありますのでその点だけご注意ください。
(1)法定相続分とは違う割合の相続分にすること(民法902条)
…遺留分を侵害する内容でも無効とはならず、侵害された相続人は減殺請求ができる。(遺留分について詳しくは次回)
(2)遺産の全部または一部を遺贈すること(民法964条)
…遺産のうち一部を遺贈する場合、遺産が特定されず、どの遺産かわからないと無効となる。財産を受け取るなら一定の義務を負うことになる遺贈(負担つき遺贈)遺留分侵害については(1)に同じ。
(3)相続人以外の者への遺贈、寄与をすること(民法964条)
…遺留分侵害については(1)に同じ。
(4)一定期間、遺産分割を禁止すること(民法908条後段)
…遺産分割の禁止は相続開始のときから5年を超えない期間でできる。ただし、相続人全員で合意すれば遺産分割できるとされている。
(5)推定相続人の廃除または廃除を取り消すこと(民法893条)
…遺言執行者によって家庭裁判所への相続権の取り上げ(廃除)の請求が必要。遺言で遺言執行者を指定しておく必要があるが、指定がないときは家庭裁判所が選任する。
(6)遺言執行者を指定および指定の委託をすること(民法1006条)
…未成年者および破産者を遺言執行者とすれば無効である。遺言執行者は複数でも可。
(7)遺贈による遺留分の侵害で民法の減殺割合とは異なる意思表示をすること
(民法1034条)
…複数の遺贈が他の相続人の遺留分を侵害する場合は、遺贈物の価格に比例して減殺されるが、遺言者が別段の意思表示をしたときは、その意思に従う。例えば、家については減殺せず預金のみ対象とするなど。
(8)共同相続人間における担保責任を指定すること(民法914条)
…遺産分割によって相続人が取得した財産に欠陥(瑕疵)がある場合、他の相続人は売主と同じ担保責任を負うが、この担保責任は遺言によって変更することができる。遺留分が害される場合には遺留分減殺の問題が生じる。
(9)特別受益者の持戻しを免除すること(民法903条3項)
…特定の相続人への生前贈与があり、被相続人が遺言で持戻しの免除をしたために他の相続人の遺留分侵害となれば、侵害された相続人は減殺請求できる。
(10)認知(死後認知)をすること(民法781条2項)
…戸籍法により市町村役場へ遺言執行者が届け出る。認知された子は非嫡出子の身分を得る。
(11)未成年後見人の指定をすること(民法839条1項)
…未成年者、破産者、被後見人に対して訴訟をした者などは、後見人にはなれない。
(12)信託の設定をすること(信託法3条2項)
…遺言により信託の設定ができる。①公益的な目的のために財産の一部を活用したい場合(目的信託)、②遺言者の死後、遺族などへの給付を行うことを内容とする者などで、遺言に一定の事項を記載しておく。
以上の12項目が遺言として効力がある内容です。専門的な内容がかなりあるので、どのような内容が効力があるかについて専門家に聞いてみても良いかもしれません。ただし、この項目の効力はあくまでも法律上の効果です。この項目以外に「家族仲良く暮らすように」などの記載をしたからといって遺言書自体が無効になるものではないので、ご安心ください。
次回は、遺言の撤回と修正の方法についてお話しします。