法定相続情報証明制度は、平成29年5月29日に運用が開始した制度です。この制度を利用することで、相続手続が今までよりも簡単となり、相続人の手続負担を軽減できることが期待されています。...
今までのお話の中で何度か遺留分という言葉が出てきました。では、この遺留分とはなんでしょうか。この遺留分について今回はお話ししていきます。...
遺言は、一度書いてしまえばそれで終わりでしょうか?あとからやっぱり書いた内容で相続させるのはやめたい、相続させる割合を変えたいと考えることもあると思います。では、遺言の撤回や修正をするにはどのような方法で行えばよいのでしょうか?撤回の方法には、以下のものがあります。 (1)遺言者が遺言書を破棄する...
遺言に書く内容として書いてはいけないことがあるのでしょうか?基本的には、遺言に関する法律の規定には書く内容について規定がないため、何を書いても構いません。しかし、その書いた内容が遺言として効力があるかについては別の問題です。では、何を書くと遺言として効力があるかについては以下の12項目が挙げられます。ただし、その遺言内容が法令に違反する内容だと無効となる可能性もありますのでその点だけご注意ください。 (1)法定相続分とは違う割合の相続分にすること(民法902条) …遺留分を侵害する内容でも無効とはならず、侵害された相続人は減殺請求ができる。(遺留分について詳しくは次回) (2)遺産の全部または一部を遺贈すること(民法964条) …遺産のうち一部を遺贈する場合、遺産が特定されず、どの遺産かわからないと無効となる。財産を受け取るなら一定の義務を負うことになる遺贈(負担つき遺贈)遺留分侵害については(1)に同じ。 (3)相続人以外の者への遺贈、寄与をすること(民法964条) …遺留分侵害については(1)に同じ。 (4)一定期間、遺産分割を禁止すること(民法908条後段) …遺産分割の禁止は相続開始のときから5年を超えない期間でできる。ただし、相続人全員で合意すれば遺産分割できるとされている。 (5)推定相続人の廃除または廃除を取り消すこと(民法893条) …遺言執行者によって家庭裁判所への相続権の取り上げ(廃除)の請求が必要。遺言で遺言執行者を指定しておく必要があるが、指定がないときは家庭裁判所が選任する。 (6)遺言執行者を指定および指定の委託をすること(民法1006条) …未成年者および破産者を遺言執行者とすれば無効である。遺言執行者は複数でも可。 (7)遺贈による遺留分の侵害で民法の減殺割合とは異なる意思表示をすること (民法1034条) …複数の遺贈が他の相続人の遺留分を侵害する場合は、遺贈物の価格に比例して減殺されるが、遺言者が別段の意思表示をしたときは、その意思に従う。例えば、家については減殺せず預金のみ対象とするなど。 (8)共同相続人間における担保責任を指定すること(民法914条) …遺産分割によって相続人が取得した財産に欠陥(瑕疵)がある場合、他の相続人は売主と同じ担保責任を負うが、この担保責任は遺言によって変更することができる。遺留分が害される場合には遺留分減殺の問題が生じる。 (9)特別受益者の持戻しを免除すること(民法903条3項) …特定の相続人への生前贈与があり、被相続人が遺言で持戻しの免除をしたために他の相続人の遺留分侵害となれば、侵害された相続人は減殺請求できる。 (10)認知(死後認知)をすること(民法781条2項) …戸籍法により市町村役場へ遺言執行者が届け出る。認知された子は非嫡出子の身分を得る。 (11)未成年後見人の指定をすること(民法839条1項) …未成年者、破産者、被後見人に対して訴訟をした者などは、後見人にはなれない。 (12)信託の設定をすること(信託法3条2項) …遺言により信託の設定ができる。①公益的な目的のために財産の一部を活用したい場合(目的信託)、②遺言者の死後、遺族などへの給付を行うことを内容とする者などで、遺言に一定の事項を記載しておく。 以上の12項目が遺言として効力がある内容です。専門的な内容がかなりあるので、どのような内容が効力があるかについて専門家に聞いてみても良いかもしれません。ただし、この項目の効力はあくまでも法律上の効果です。この項目以外に「家族仲良く暮らすように」などの記載をしたからといって遺言書自体が無効になるものではないので、ご安心ください。 次回は、遺言の撤回と修正の方法についてお話しします。 [前のページへ] [次のページへ]
公正証書遺言は、前回お話ししたように公証人に作成してもらいます。この過程において、公証人は遺言者の悩みに親身になって相談を受け、必要な助言をしたりして、、遺言者に最善の遺言書を作成してくれます。しかし、資産を誰にどれだけ相続させるかについては、公証人が決めることではなく、遺言者自身が決めなければなりませんので注意です。...
今回は、公正証書遺言についてお話ししたいと思います。 公正証書遺言は、公証人が遺言者からの遺言の内容の口授を受け、それに基づいて公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめて、作成する方式です。 公正証書遺言は、通常2〜3部作成されます。このうち、原本が公証役場に保管され、正本・謄本が遺言者に交付されます。...
前回お話しした遺言の方式のうち、今回は自筆証書遺言についてお話ししたいと思います。...
遺言には方式があるというけれど、一体どんなものがあるのだろうと思われるかもしれません。遺言の方式は大きく分けると、普通方式の遺言(①自筆証書、②公正証書、③秘密証書)、④特別方式の4つの種類があります。以下、この4種類についてそれぞれお話しします。...
相続人の範囲は法律で決まっています。ただ、その範囲内の相続人がすべて相続分を主張できるわけではありません。相続順位があるので、その範囲の中でも相続する者としない者(後順位のため)があります。相続する順位にいる者を「推定相続人」といい(以下、相続人はこの意味)、その者が死亡などで欠けると後順位の相続人が相続する者へと変化することとなります。 では、どのような順で相続人になるか。そもそも、相続人は2つに分かれます。死亡者にとって血の繋がっている者(血族)と、死亡者の配偶者の2つです。配偶者は常に相続人になります。厳密にいえば、順位など関係なく常に相続人になるということです。一方、血族では、法律で規定された順位で相続人となるため、必ずしも全員が相続を受ける立場にいるわけではありません。以下、血族についてお話ししますが、血族の順位とは別に妻または夫という配偶者は常に相続人であることを念頭に入れてお読みください。 では、血族の方では、どのような順位で相続人になるのでしょう。まず、第1順位の相続人は子です(民法887条)。嫁に行った娘も養子に出て行った子も、みんな相続権を持ちます。養子として入った子も同じです。何人いても、同列で第1順位となり、その取り分は頭割りで同じとなります。ただし、この順位はあくまで血族としての第1順位というだけであり、配偶者はこれと並ぶこととなります。配偶者は1人しかいないわけですので配偶者の相続分を全部とり、子は相続分をその頭数で割ります。このように、配偶者の取り分と、血族の取り分は切り離されて考えられるのです。血族について、子がすでに死亡していて、その子つまり孫がいるときには、その孫が子に代わって相続人になる(代襲相続という)のですが、それについて詳しくは、また別の機会にお話しします。 次に、子や孫などが1人もいなければ相続権は血族の第2順位へ進みます。第2順位は、父母、祖父母、曾祖父母です(民法889条)。ただし、この順位内でもさらに相続人なる順があり、血縁の近い順に、父母、祖父母、曾祖父母の順で相続人になります。つまり、父母がいれば、祖父母は相続人にならないのです(曾祖父母の場合もまた然り)。また、父母のどちらか1人しか生きていなくても、その1人だけが第2順位の相続人となります。 最後に、第3順位となるのは、被相続人(死亡者)の兄弟姉妹です(民法889条)。この順位内で、兄弟姉妹がなくなっている場合、その子つまり甥や姪が代襲者として相続人となります。 以上のような順位で血族は相続人となります。第3順位までのものが誰もいなければ、配偶者だけが相続人となります。いとこなどは相続と無関係なのです。さらに、配偶者も血族もいなければ、最終的に遺産は国(国庫)のものとなります。このような場合、国ではなく、生前お世話になった方など誰か特定の人に遺産を渡したいとお考えになるならば、遺言でその旨を書くことをお勧めします。特別縁故者に与え得る制度もありますが、確実に遺産を渡すためには遺言がある方が良いと思います。 次回は、いよいよ遺言の書き方(方式)についてお話しさせていただきます。 [前のページへ] [次のページへ]
相続人は誰か?遺言を書く際、考慮するべき事の一つです。1人に相続させるつもりから誰が相続人など考える必要はないと考える方もおられるかもしれません。しかし、法律上の相続人が複数いる場合、1人に単独相続させたときでも、遺言で勝手に減らすことができない部分が法定相続分の中にはあります。これを、「遺留分【いりゅうぶん】」と言います。一部法定相続人を除いて、相続人の中にはこの遺留分を主張して相続財産をもらうことができるのです。 では、単独で相続させることを遺言で書くことは出来ないのかといえば、そうではありません。遺言の書く内容としては有効なものです。ただ、遺言の対象外となった相続人が遺留分を主張しかもしれないことを考慮しておくことが大切なのです。 この遺留分について詳しくは、また別の回でお話しさせていただきます。では、次のページで、法律上誰が相続人か(誰が法定相続人か)について、お話しします。 [前のページへ] [次のページへ]